cocoせせらぎホームページ   2022・3・1

お雛さまの顔を 今までこんなにゆっくり見たことがあっただろうか・・・

コロナのせいでしばらく見ることができなかったお雛さまに 逢いたいという気持ちがとても強くなってきました。80歳のばあさんが と我ながらおかしかったのですが 近くの里山の雑木林が 風は冷たいのに 春の陽射しの下で明るくけむったように なんとなく芽吹きを感じさせる2月半ばになってくると もうすぐ雛祭りだなぁ 今年はお雛さまに逢えるだろうか と心がうきうきしてきます。

さっそくライフサポーターの方や理事長に 今年はお雛さまを出しますか? ぜひお雛さまに逢いたいのですが・・・と話してみると オミクロンも下り坂 せせらぎの全員がワクチン3回目を打っているし 今年は出しましょう そしてちらし寿司でも取ってささやかなパーティーをしましょう ということになりました。

飾る場所もサロンの奥ではなく せせらぎ遊歩道を散歩する方たちにも見てもらえるように 大きなガラス戸の出入り口近くにセットしたらどうだろう と案を出しました。コロナで沈みこんでいるこの時期に 世の雑事には関係なくのほほんと明るいお雛さまの顔で 少しでも地域が明るくなればという願いをこめた案・・・またコロナの時代に育つ子どもたちが行動を制限されて閉じ込もらざるを得ない今 通りがかりにでも見て気持ちが解放されたらいいなという願いをこめた案。  今までどおりにサロンの奥に・・・という意見など いろいろ出ましたが 2月半ばに 出入り口近くに七段飾りのはなやかな雛段が飾られました。

通りがかりの高齢者の方 子どもづれのお母さん 保育園のお散歩 近所のご家庭など 三々五々立ち寄ってはライフサポーターさんやボランティアの方達とおしゃべりしていかれます。前に供えてあった豆菓子やあられを「どうぞ」と差し出すと 小さい時にお雛さまが欲しくてしょうがなかった・・・とまた話題が広がります。ある年配の方は「写真を撮らせてください」と立ち寄られ「お雛さまを見ると 13回忌を済ませたけど38歳で亡くなった娘のことを やはり思い出します」と言われ 胸をつかれて言葉が出ませんでした。

そうだ 夜道からも見えるようにしたらどうだろう ぼんぼりに灯りをつけて カーテンを開けて お勤め帰りなどの道行く人にも見てもらおう! 今の物騒な世の中 何があるかわからない時代に そんなことやめた方がいいという意見もありましたが 二週間くらいの間 思い切ってカーテンを開けました。暗い夜道から見ると お雛さまのあたりだけぼーっと明るく浮きだして 夢のようなあたたかい空気が広がっていきます。この地域は安全なあたたかい地域なんだよ と言ってくれてるような空気感。

毎晩8時半頃に降りていって 今日も一日お疲れさま! と声をかけながら灯りを消すのですが ぼんぼりを消す前の一瞬 ふっとお雛さまの横顔に見惚れてしまいます。ほんのりとした灯りに 下ぶくれのまあるい顔 心配なことなどなにもないような穏やかな顔が浮かびあがっています。着物も木目込みの布地を重ねて 日本の色の取り合わせの美しさが際立っています。

そのとき 今までの人生で 何度も何度もお雛様を飾ったけど こんなにゆっくりお雛さまの顔を見たことがあっただろうか・・・とふと思いました。一人娘の幸せな人生を願ってお雛さまを出してきては飾り すぐに片付けないと嫁に行き遅れるよ との言葉に3月3日が終わるとバタバタと片付けて お雛さまの顔を娘と一緒によく見る暇もなかったなぁ まったく慌ただしく過ごしてきたなぁ・・・と。今やっと あり余るほどの時間のなかで お雛さまの顔に見とれる余裕を与えられたんだ ぼんぼりの灯りの中の可愛い顔を見ながら これぞ80歳の幸せなんだな~~ と。

IMG_0025赤い光を投げかけていたぼんぼりを消して カーテンを閉めて いつもの暗い夜道を確かめてから部屋にもどりました。お雛さまたち おやすみなさい!       (土)