cocoせせらぎに暮らして    2021・5・15

IMG_0002   (せせらぎ遊歩道で出会った自然の芸術 穂先きのピンクとグリーンのグラデーション )

エリック・エリクソンとの再会

「心は生涯にわたって発達する。。超高齢期も・・・」 私が最近出会った 希望をもたせてくれるすばらしい言葉です。

今年に入って cocoせせらぎの中で高齢者の生き方について学習会をやりましょう!という声が出てきて その参考資料の一冊『東大がつくった高齢者のための教科書』を読んでいたとき なつかしいエリック・エリクソンの名前に再会したのです。

私は娘の子育て6年くらい 保育という現場で20年くらい 子どもたちが一日一日驚くほど発達していく姿を見てきました。一方で 発達がうまくいかない子どもたちの支援の方法について 精神発達医学の専門家 佐々木正美先生の講義を20年間受けつづけました。先生はエリック・エリクソンの発達論をひいて 子どもたちの発達についてだけでなく 人間として人間らしく生涯を送るためにはなにが必要か・・・ということを よく講義の合間に話してくださいました。

「人間の一生のそれぞれの時期には発達課題があって それをのりこえてこそ次のステップに軽く足を踏みだすことができる。エリクソンは発達課題をcrisisクライシスという単語で表している。つまり裂け目。氷河の裂け目のように そこを無事に超えなければ危機におちいる という意味のことばである」と。 20年間先生のお話を聞きつづけてきたので このcrisisという単語は今も耳に残り 人生の各段階で私はうまく課題をクリアして生きてきただろうか・・・ときどき振り返ることがあります。

ここに一応 エリクソンの考えた人間の一生の各時期の発達課題と crisisを超えることに失敗した状態を「教科書」を参考に書きとめてみます。

Ⅰ 乳児期  親との間に「基本的信頼」を構築し 安心感や安全感を得る。それにより今後の人生生     におけるさまざまな新しい経験に立ち向かっていくことができる。(これに失敗すると     未来へのおそれを抱く「基本的不信」におちいる。)

Ⅱ 幼児期前期 自分の行動をコントロールしルールを守ることができる自分を誇る「自

        律感」を身につける。例えばトイレットトレーニングなどが目標となる。

(これに失敗すると 他者に対する恥じらいや自分の能力への疑惑を抱く「恥

・疑惑」におちいる。)

Ⅲ 幼児期後期 関心が遊びに向けられ「あれはやってみたい」「これはやりたくない」

              という欲求のもとに 自発的な行動「積極性」を身につける。

(親の意向とぶつかる場合もあるため「罪悪感」を覚え 積極性を抑えてし

まうこともある。)

Ⅳ 児童期 学校の勉強やスポーツなどを身につけることを通じて 子ども集団の中での

              自分の位置を確立。その時に「勤勉性」を身につける。

(これに失敗すると「劣等感」を感じることになる。)

Ⅴ 青年期前期 身体的・知的発達にともない「自己とは何か」に対する意識が高まる。

            これこそ自分であるというアイデンティティー自我同一性を確立する。

(アイデンティティーを獲得することが課題。)

  青年期後期 友人や恋人との間に深い関係を築いていくことで「親密性」を獲得する

              またその中で自分に対する信頼も深めていく。

(これに失敗すると「孤独」におちいることになる。)

  壮年期 仕事や家族関係の中で 自己に固執せず新たな世代を育てていく「世代性」

              を身につける。これによってさらに自己が確立する。

(発達の停滞をのりこえることが課題。)

  高齢期 自分の人生に満足し受けいれる「統合」を達成する。

            (これに失敗すると 人生の時間があまり残されていないことに対する「絶

      望」におちいる。)

  超高齢期 さらに迫りくる死の絶望を 家族との信頼関係などを通じてのりこえ「超

           越」にいたる。

私が佐々木先生から学んだころのエリクソンは 人生を6期にわけるシンプルなかたちで 壮年期の「自分優先ではなく 自分の得た知識・経験・智慧を次世代に伝えて 安心して人生を終わる」ところまでだったような気がします。しかしエリクソン自身が長生きをして歳をかさねるにつれて 高齢期と超高齢期の発達課題を加えていった ということを今回知りました。

老年期は体力も知力もおとろえて 失うことばかりだと考えられていたのに 今や100歳人生といわれる超高齢社会に入り 現代の老年心理学では「生涯発達 加齢も発達の一環であり 衰退ではなく変化である」という考え方が主流とのことです。

せせらぎ入居者の私たちも ”よかったこと悪かったこと全部あわせて自分の人生であると 受けいれる” 高齢期を過ぎつつあり いよいよ ”死に向きあう” 超高齢期にさしかかっていきます。体はますますおとろえて 人の支援なしに生活できなくなり 死をむかえる恐怖。それを今まで築きあげてきた ”人への信頼” によって「超越」に至ることができるだろうか・・・その準備はできているだろうか・・・

92歳で亡くなるまで学びつつ考えつつ生き  ”心は生涯にわたって発達する” ことを教えてくれたエリクソン。なつかしいその名前に再会し 今回もたくさんのことを学びました。                      (R)

IMG_0004 端午の節句を調理スタッフの W さんが 鯉のぼりの稲荷寿司で祝ってくれました。W さんは「私の料理にはビタミン I(愛)が入ってるからね」とよく言われます。ふっくら甘く煮た油揚げが超おいしかった!