『いつまでもココに居たい! そのために知っておきたいこと』
勉強会報告 佐々木直子さんをお迎えして
2023.5.18
よりよい高齢期をともに過ごすために,COCOせせらぎでは今まで「自立と共生について」「認知症について」など、講師をお迎えして勉強会をもってきました。今回は介護事業所ホッとスペース中原の介護支援専門員の佐々木直子さんをお迎えして「介護保険制度」の実際のところをお話ししていただきました。
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介護事業所「ホッとスペース」は もちろん制度にのっとった介護の仕事をやっている一方で まだ制度になっていないことに関わるケースも多くなってきています。精神障害の方 認知症の方 シングルマザー 刑務所少年院からの退所者など。最近では引きこもりの方たちへのアウトリーチにも関わり 支援のはざまにある問題の相談にものっている事業所です。
きょうは 皆さんと関係のある高齢者介護保険制度について おさらいしたいと思います。
日本に介護保険の仕組みができたのは西暦2000年で65歳になると国民全員が緑の保険証をもらえます。(40歳以上で特定疾患などの場合でも支援が受けられます。)
このサービスを使うには 役所に申請して調査を受けて認定されたら役所からケアマネジャーの一覧をもらって そのなかからケアマネジャーを決め 介護サービスがはじまります。
どんな介護サービスを受けるかは、ケアマネジャーと話し合ってケアプランを作ります。全部を介護保険でまかなえるものではないので、最低生活をつづけるだけでも保険からオーバーする場合は自費でまかなうケースもあります。全部を税金でやってもらえない今の日本の財政状況 少子高齢化で 支える側はどんどん減り 支えられる側は増える一方であることを考えると これ以上政府に期待できないかもしれません。
現在の介護保険制度でどのような生活が可能か 3例をあげて説明したいと思います。
- 要介護5の男性 息子と二人暮らしで寝たきりなので 息子が出社している時間を支援します。 訪問介護(朝のオムツ交換)・週2 身体介護(昼食介助)・週6 訪問入浴 ・週2 身体介護(夕方の水分補給)・週4 介護用具貸与2
介護費用は 1割負担で1ヶ月に47,745円
- 要介護4の女性 一人暮らしでホッとスペース内に住む 身体介護(トイレ デイ準備)・週7 デイ通所・週2 入浴・週1 身体介護(トイレ 夕食弁当介助)・週7 介護用具貸与4 認知症加算
介護費用は 3割負担で1ヶ月に90,753円
- 要介護2の女性 ホッとスペース内に住む 娘に入浴させてもらう デイサービス・週6
介護費用は 1割負担で80,479円
- ②③共にデイサービス内での食事代は別で 1回500〜800円
「最後までCOCOせせらぎにいたい」という今日のテーマを考えていくとき どのような支援があり どれくらいお金がかかり どのような介護からもれるすき間があるか これで少し具体的になったでしょうか。 みなさんの中で最後までせせらぎで過ごそうと思っている人はいますか?
どんなに有効に介護資源ネットワークを使っても どうしてもすき間の時間ができてしまうのが現実です。それをどうやってせせらぎの中で支えあうか すき間をボランティアでなんとか埋められるかが鍵となってきます。ボランティアは無償だからそんなに簡単なことではないですよね。
たとえば①の例にあった 夕方水分補給のための30分を介護ヘルパーさんに頼む 買い物をヘルパーさんに頼む・・・のではなく誰かが助けることができるか。ちょっとしたことを助けてくれる人がいるか 支えあいのシステムを作りあげることができるか ということです。
そしてもう一つ 最後をせせらぎの部屋で迎えたい場合 往診の先生が必要です。一人で最後を迎えてもかかりつけ医師が死亡診断書を出してくれます。そうでないと警察が関わることになります。死亡から24時間以内だったらオーケーです。私はたくさんの死を見てきましたが 部屋で一人で死ぬことは特別のことではないと思っています。家族と過ごしていても個室で寝ていれば 最後はだれも看取らないこともあります。
他人のことではなく明日の自分のことと考えたからこそ このような学習会が企画されたのでしょうね。私はCOCOせせらぎが 他とちがう「共生していこう」という “種が撒かれた場所” だと思っています。みんなの心持ちによってチームができていくもので 5年ほど前にうかがったときと比べて いいチームになっているな と感じました。
ーーー質疑応答ーーー
・最後の段階で 介護5の寝たきりのような状態になった場合 ここで過ごすのはちょっとむずかしいかな と正直思います。でも介護3・4くらいまでは 介護保険を使って みんなで学び協力しあって 勉強しあうならせせらぎで過ごすのも大丈夫かなと。どこまでその気になって協力しあえるか・・・今日お話を聞いて かなりのところまで行けるのではと思いました。
・意思疎通ができなくなるなど 一定のところまで行ったら ここで過ごすのはダメかなという意見が今までありましたが 実際ここで最後まで暮らしたいという人の手が挙がり 大家さんの協力もあり 可能かなと感じられました。
・認知症になった場合 COCOせせらぎにいられるでしょうか。
答:認知症についてはケースバイケースです。こうなったらせせらぎでは無理というような線は引けません。それはみんなで作っていくものです。認知症というのは 対応によって 環境によって 一人一人の気質によって 問題行為になるかならないかが分かれてきます。 研究も日進月歩で 薬も出てきています。ただ認知がむずかしくなる前に任意後見人を決める手続きを裁判所でしておくことは大切です。
新しい取り組みをさまざまなされている ”ホッとスペース” で 90名ものヘルパーさんたちのトップとして日々お忙しく過ごされている直子さん 時間を割いて 私たちの悩みに耳を傾けてくださって 本当にありがとうございました。(入居者・土)